危機を乗り切る切り札、BCMとは?!BCPとの違いも解説!

製油所と工場 BCP
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BCMに取り組むべき3つの理由

BCM自体について解説したところで、BCMに取り組む重要性を以下3つの点から紹介していきます。

  • ・サプライチェーン維持能力のアピール
  • ・準備不足の露見
  • ・CSRの一環としての企業イメージアップ

上記3点を理解し、伝えられるようにすれば、決定権者へのプレゼンや従業員へのモチベーションアップにつながります。では、それぞれの詳細を見てきましょう。

サプライチェーン維持能力のアピール

サプライチェーンとは、製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れのことをいいます。

BCMがしっかりしていれば、材料や商品の流通を滞らせるリスクが少ないことを顧客に示すことができ、サプライチェーンを維持する能力があるとアピールできます。これは安心して取引できるというアピールにもつながるでしょう。

実際、新型コロナの流行や東日本大震災といった大きなリスクの発生時に倒産して、周囲に影響を及ぼす企業は一定数あります。他国や他業界でのリスクがニュースになったときなどに、普段からBCMに取り組んでいるとアピールできれば理想的です。

準備不足の露見

2020年現在、新型コロナの流行で、多くの企業で準備不足が露見したのもBCMに取り組むべき理由の1つです。MS&ADインターリスク総研株式会社によると、2019年の時点でBCPを作成している企業は56.0%あったにも関わらず、多くの企業がコロナ禍で混乱に陥っています*。

*参照:第五回事業継続マネジメント(BCM)に関する日本企業の実態調査報告書(2019) – MS&ADインターリスク総研株式会社

先の報告では、東日本大震災や2016年の熊本地震でBCPが注目されてきた背景があり、BCMも地震などの防災関連のものが突出していると指摘されています。つまり、あらゆるリスクに備えて事業を継続できるようにするという、BCPやBCMの本来の目的が理解されておらず、表面的な取り組みになっていたというわけです。

今後も発生する様々なリスクへの準備として、BCMは重要であるといえます。

一方で、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組み、パンデミックへの対応策を持っていた企業の中には、コロナ禍の中でも増益を果たしたところもあります*。

*参照:増益額でみるコロナ決算 DX勢、「あつ森」任天堂… – 日本経済新聞

経済産業省では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を以下のように定義しています。

❝企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること❞*

引用:「DX 推進指標」とそのガイダンス – 経済産業省

CSRの一環としての企業イメージアップ

BCMの成果として非常時のCSR活動ができ、社会貢献につながれば、企業のイメージアップにもつながります。新型コロナウイルスに感染したものの、満室で病院に入院できない軽症患者に客室を貸し出したホテルがその代表といえるでしょう。

BCMのプロセスはPDCAが基本

BCMのプロセスには規格があり、PDCAを回してくいくのが基本となっています*。

*参照:実効性のある業務継続計画(BCP)の策定~第2回~

要するに、一度決めてしまえば終わりではなく、点検やブラッシュアップをして、よりよいものにしていく必要があります。

BCMにおけるPDCAの各ステップの詳細は上記リンクから確認できますが、ここではもう少し簡単に解説していきます。BCMのプロセスの全体像をつかみ、最適な初動につなげることを目的として読んでいきましょう。

BCMのPlan

BCMのP(Plan)の要点は、以下の4つです。

  • 基本方針の作成:目的を明確にし、経営層の承認とコミットを得る
  • 事業インパクト分析(BIA):対象事業や必要になる経営資源の特定
  • リスクアセスメント(RA):リスクのシナリオ設定やボトルネック特定
  • 事業継続戦略(BC戦略)の作成:リスクの影響を最小限にするための具体策を検討

当たり前ですが、BCPを作成していないとBCMのPすら取り組めません。したがって、BCPを作成していないなら、実際にはBCPの作成から取り組むことになります。

BCMのDo

BCMのD(Do)の要点は、以下の4つです。

  • 初動対応計画(IMP)の立案:初動(まず何を行うか)を定義し、書類としてまとめる
  • 事業継続計画(BCP)の策定:対応の中心となる組織の体制などを見直す
  • マニュアルの整備:非常時の対応や常時の保守などを書類にまとめる
  • 授業員の研修と教育:従業員がとるべき対応の周知や重要性の教育、訓練など

先述のPlanを受けて、対応策を立案したり、マニュアル作成や訓練をしたりすることになります。

対応の中心となる組織が自覚を持って行動するのはもちろんのこと、非常時にとるべきアクションリストなどを従業員に配布して、BCPを意識してもらうのも重要です。

BCMのCheck

BCMのC(Check)の要点は、以下の2つです。

  • BCPの訓練:訓練プログラムの作成と実行によりBCPやIMPの内容を評価する
  • 内部監査:内部監査員による監査とレビューを実施する

BCPの訓練を通して有効性の評価をしたり、改善案を出したりします。内部監査員を動員して、マニュアルや組織関係者のレビューをするのも重要です。

BCMのAct

BCPのA(Act)で行うことは、継続的な改善に向けての行動です。具体的には、先述のCheckの結果から改善すべきポイントを特定し、必要な変更をしていきます。

場合によっては、BCMの対象にしている事業を見直したり、組織の構成を変更したりする必要も出てくるでしょう。

特に、経営陣の交代などが行われた際には、BCMについて改めて話し合う必要があります。

いざという時の事業継続のために、今こそBCMを!

この記事ではBCMの概要やBCPとBCMSとの違い、重要性、プロセス(PDCA)を解説してきました。

BCMの成果がわかる非常時は、そうそう訪れるものではありません。しかし、いざという時にBCMに取り組んでいる企業とそうではない企業とでは大きな差が出るでしょう。そして、会社が10年後生き残っているかどうかは、増収増益以上に、平常時から非常事態に備えているかどうかが重要となるでしょう。

毎年の様に大きな鰓蓋が発生し、ビジネス環境が変わる中、BCM、BCPの作成はもはや企業に必須のものになったと言っても過言ではないでしょう。

ぜひ、今回紹介した情報を活かして、BCMに取り組んでみてください。

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