BCPとは

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私たちの生活は様々なリスクに曝されています。

2011年3月11日に発生した東日本大震災からもう10年が経とうとしていますが、未だ多くの人々を苦しめ、私たちの生活に影響を与え続けています。古来より数多くの自然災害に見舞われて来た日本列島において、「緊急事態」「不測の事態」はその言葉の意味とは裏腹に非常に身近なものと言えるかもしれません。

企業活動もまた、近年とみに深刻化している自然災害で多くの影響を受けています。昨今のグローバル化、経済ネットワークの緊密化は、遠方の地での災害がサプライチェーンの分断や燃料・原材料の不足など企業活動に深刻な影響を与えたりと、予期しえない大きな損失を生じる可能性を高めています。

このような「不測の事態」「緊急事態」への備えとして必要とされるのが「BCP」です。

BCPとは

BCPとは、Business Continuity Planの略で、「事業継続計画」と訳されます。中小企業庁ではBCPを

「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画」

出典:中小企業BCP策定運用指針 1.1 BCP(事業継続計画)とは|中小企業庁HPより抜粋

と定義しています。

BCPとは企業活動を事業単位に区切り、緊急事態時に中核事業への影響を最小限にし、早期の復旧と成長路線への回帰を目指すための計画がBCPです。

日本を取り巻く災害

日本では毎年様々な災害が発生しています。

2019年の台風19号では多くの河川が氾濫し、大雨や暴風、高潮などにより多くの被害が発生しました。台風として史上初めて特定非常災害が適用されました。台風後に大きな議論を呼んだ、八ツ場ダムの緊急放流は記録に新しいところです。

日本に大きな爪痕を残した東日本大震災や阪神淡路大震災に代表される地震は、日本の代表的な自然災害の1つです。世界で起こる地震の1/10が日本で起こっている*と言われています。
* 参照:地震について | 気象庁HP

中小企業庁のHPによると日本の自然災害の発生件数と被害額は増加傾向にあります*。アウトソーシングや工場の分散化などが進んだことにより、災害による損害は災害発生地から遠方に位置する企業でも事業継続に関わる程の影響を被ることがあります。
* 参照:2 我が国における自然災害の発生状況 | 中小企業庁

さらにグローバル化の進展や経済・生産活動の緊密化によって、多くの企業は海外にまで注意の目を向ける必要があります。自然災害の件数や被害額の増加、経済の緊密化が進む中、緊急事態への備えたるBCPの重要性は非常に上がってきていると言えるでしょう。

日本のBCPを取り巻く状況

日本政府は、2010年6月に閣議決定された「新成長戦略実行計画(工程表)」で、2020年までにBCP策定率を大企業ではほぼ全て、中堅企業では約50%を目標として掲げました。しかし、この目標は順調に進んでいるとは言えそうにありません。

内閣が2017年に実施した「平成29年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、BCPの策定率の調査も行われ、そこでは大企業の64%、中堅企業の31.8%しか策定していないという結果が出ました。また策定中の企業を含めても大企業では81.4%、中堅企業でも46.5%に留まります。

また、帝国データバンクが2019年に実施した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2019年)」では、回答のあった約1万社のうちBCPを策定している企業は約15%、BCPの策定を検討している企業を含めても約45.5%に留まるとの結果が出ました。日本の企業ではまだまだBCPの策定が進んでいない状況がわかります。

BCM(事業継続マネジメント)

BCPに類する言葉に「BCM」があります。BCMはBusiness Continuity Managementの略で、事業継続マネジメントと呼ばれます。

内閣が公開した「事業継続ガイドライン(平成25年8月改定)」では、BCMを

「CP 策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、 取組を浸透させるための教育・訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマ ネジメント活動」

出典:「事業継続ガイドライン(平成25年8月改定)

と紹介しています。

BCMはBCPを含む包括的な概念であり、平時からのマネジメントとPDCAサイクルを重要な要素として強調しています。

BCPの効果とは

中小企業庁が公開している「中小企業BCP策定支援」や内閣府の「事業継続ガイドライン」を見ると、BCPの策定作業には多く人員や作業を必要とする大規模な取り組みであることがわかります。

策定後の運用に当たっても定期的なPDCAサイクルの実行と策定内容の検証、変更作業を求めており、BCPの策定、運用の両方において大きな負担がかかることがわかります。

一方、BCPの策定によって緊急時に大きな効果が出たとの調査結果も出ています。

BCPがもたらす2つの効果

緊急事態を想定し、事前に策定しておくBCPには次の様な2つの効果があると言われています。

  1. 損害を最小化
  2. 損害からの早期復旧

つまり、BCPの策定によって損害を抑えるだけでなく、いち早く復旧し平時の状況に戻ることが期待されます。

次の図は中小企業庁が公開しているBCP導入効果のイメージ図です。

この図を見るとBCPを策定した場合と策定しない場合の違いがわかります。

BCPは策定段階で中核事業の特定と目標復旧時間を定め、調達先の多様化や生産設備の保全、代替品の準備等を行う必要があります。これら事前準備により不測の事態が発生してもBCPに沿って対応することで、損害の最小化と中核事業の早期復旧が可能となります。

緊急事態に有用なBCP

前傾の2019年5月に行われた帝国データバンクの「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2019年)」では、BCP策定企業の約6割で「従業員のリスクに対する意識が向上した」との回答が出されており、その他にも「業務の定型化・マニュアル化が進んだ」「事業の優先順位が明確になった」といった効果が指摘されています。

またこちら前傾の内閣府の調査「平成29年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、自然災害時にBCPが役にたったかの問いに対し、役に立ったとの肯定的な回答が半数以上を占める一方、役に立たなかったと否定的な回答は1%強のみであり、BCP策定企業の多くでBCPの有用性が認識されています。

さらに、BCPは上記の様な直接的な効果だけでなく、防災に係る融資や保険の優遇、取引先や株主などのステークホルダーからの信頼の獲得といった副次的な効果も指摘されています*。
* 参照:出典:中小企業BCP策定運用指針 1.1 BCP(事業継続計画)とは|中小企業庁HPより抜粋

「緊急事態」が身近からこそ必要なBCP

世界的に未曾有の事態を引き起こした新型コロナウイルスは、世界中の人々にテロや地震以外に私たちの生活を根底から変えうるリスクがあるということを認識する契機となりました。

アフターコロナ、withコロナが叫ばれていますが、私たちは様々なリスクを想定し、備える必要があります。

この備えとなるのがBCP(事業継続計画)です。

前述の様にBCPは日本企業の多くで十分に策定されているとは言えない状況ですが、一方で災害時において一定の効果も認識され、多くのBCP策定企業から肯定的に評価されています。

気候変動問題への対処が遅れれば今後「緊急事態」の発生は増えると予想されます。そしてその備えとして、BCPは多くの企業にとって必須の取り組みとなっていくことが予想されます。

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