非常用電源とは?自家消費型太陽光発電を使ったBCP対策

非常用電源としての太陽光発電 BCP
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近年、集中豪雨などの多発する災害に備える、非常用電源・BCP対策が企業や自治体の間で注目されています。万が一の時に電源・電力を確保できれば、事業の継続や日常の所要にも対応することが可能です。

電気が使えないことで、事業継続が困難になったり、時には生命の危機にさらされることもあり得ます。今回は、BCPにおける非常用電源の意義、そして比較的容易に取り組める方法として自家消費型太陽光発電を使ったBCP対策を具体的な事例を添えて解説していきます。

BCPにおける非常用電源の意義とは?

BCPとは、英語のBussiness Continuity Plan (事業継続計画)を略したもので、企業が非常事態に陥った時でも、重要な事業の継続が可能となるよう事前に策定しておく計画のことです。

BCP対策とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、方法や手段などを取り決めておく計画のことです。

引用:BCP(事業継続計画)とは – 中小企業庁

非常用電源とは

非常用電源とは、電力供給が停止した際に一時的に電力が供給できる装置や設備のことです。東日本大震災をはじめ、近年相次ぐ台風・豪雨などの災害に備えて、企業や自治体において非常用電源を設置する動きが強まっています。非常用電源の装置・設備*には以下のようなものが採用されています。

  • 太陽光発電と蓄電池
  • ディーゼル発電機
  • ガス発電機
  • ポータブル発電機(電池)
  • インバータ発電機

*参照:災害対策活動のための電源設備東京海上日動リスクコンサルティング(株)

日本は台風・地震のリスクが高い

近年頓に増えたように感じる自然災害ですが、実際に平成20年からの約10年間だけで見ても、国内の年間の災害件数は86件~91件*とかなりの件数が発生していることがわかります。

*参照: 災害統計‐eStat

日本は火山が多くまた地理的な要因から地震や台風が多発する環境にあります。1985年~2018年の自然災害の発生率は台風が最も多く、全体の57%を占めています。次に多いのが地震で発生件数は20%未満にとどまるものの、被害総額では全体の約83%を占めています。

出典:我が国の自然災害の発生状況 – 中小企業庁

地震や台風などの災害が発生すると、最悪の場合、ガス・電気の供給が停止することがあります。特に近年は自然災害の激しさが増しており、ブラックアウトや停電が発生することも増えています。エネルギーインフラの復旧期間は3日程度から2週間程度とかなり幅があります*。

*参照:平成30年度の災害とその対応 ‐ 経済産業省

万が一に備えることが企業や自治体の評価につながる

他人事のように思えた災害でも、いつどこで地震や台風などの自然災害が発生するかは誰にも予測ができません。そういった時の備えとして企業が用意しておくべきものがBCPになります。

平成29年に内閣府が行ったBCPの策定調査では以下のような統計が報告されています。

出典:企業の企業継続及び防災の取組に関する実態調査 – 内閣府

大手企業ではすでに64%が策定済み、中小企業でも31%と徐々に関心が高まっている様子が伺えます。

非常用電源・BCP対策が万全であれば、企業や地域経済の損失を最小減に抑えることが可能です。BCP対策を視野に入れた経営戦略は、単にコストなど額面上の問題だけでなく取引先や顧客、地域住民との信頼関係を築くうえで欠かせない対策となりつつあるのです。

自家消費型太陽光発電とは

非常用電源として一般的に取り組みやすいのが、工場の屋根などに設置した太陽光発電で生み出した電力を活用する方法です。太陽光発電システムに供えられた自立モードを活用する方法と蓄電池に貯めておく方法があります。自立モードの場合、雨や曇天などで太陽光発電が利用できない場合など電力の供給に様々な制約があるのが難点になります。

太陽光発電と蓄電池によるBCP対策は、CO₂削減や長期的な電力コストの削減といった効果も得ることができます。太陽光発電の活用方法には、現在大きく3つのタイプがあります。

自家消費型太陽光発電

自家消費型太陽光発電は、電気を「売る」ことよりも「使う」ことを重視されます。工場の屋根や工場内の空き地に太陽光発電を設置し、自社で電気を創り、そしてそれを自社で消費します。太陽光発電は日の関係があるため完全に自社の電力を賄うのが難しいことが多いですが、電力会社からの給電に完全に頼らなくても良くなり、BCP対策に合わせコスト削減も見込めます。また、CO₂削減にも貢献できることから、SDGsやREアクションの一環としても注目されています。

FIT制度による電気の買取価格が低下したことや、ここ数年で災害が多発していること、加えてFIT制度終了後の対策などから自家消費型太陽光発電の導入は今後増えていくと考えられます。

自家消費型太陽光発電のBCP活用事例

それでは、自家消費型太陽光発電を活用してどのようなBCP対策が可能なのか、具体的な活用事例をいくつかご紹介していきたいと思います。ここに記載されている情報はインターネットに公開されている情報を参考にしていますので、詳細については各サイトを参照下さい。

各企業や自治体のみなさまのBCP対策の参考にして頂ければ幸いです。

活用事例1.株式会社リコーの非常用電源

出典:事業の省エネ化とEV/PHVの活用 ‐ 株式会社リコー

株式会社リコーではRE100(100%再生エネルギー)、BCPへの取り組みの一環として、全国354拠点の事業所にて太陽光発電と蓄電池を設置していく方針を表明しています。さらに支社の車両に電気自動車EVを導入することで燃料コストも削減しつつ、いわば移動できる非常用電源を確保しています。

出典事業の省エネ化とEV/PHVの活用 – 株式会社リコー

まずはモデルと事業所として2019年3月に岐阜支社にて導入が完了しています。現時点では消費電力の75%を太陽光発電で賄っているとのことで、昼間の電気は極力自然光で賄える建築設計にもこだわっています。事業所自体が顧客へのショールームとなり、自社で提供するSDGsやBCP関連の商品を紹介しています。

活用事例2.医療法人 羽生の丘・オーベルジュの非常用電源

出典:次世代の自家消費型太陽光発電 – 環境ビジネスオンライン

医療法人、介護老人保健施設 羽生の丘・オーベルジュでは太陽光発電と蓄電池の併用によって複数の施設で100%自家消費を実現しています。医療介護施設であることから、非常時の電源対策は大きな課題の1つであり、太陽光発電と蓄電池の組み合わせによってその課題に対応しています。

出典:羽生の丘・オーベルジュ – 日立産機システム

低コストで安定した電力供給、BCP、完全自給が成功している一例です。

活用事例3.北海道函館市の非常用電源

出典:再生可能エネルギー推進への取り組み – 函館市

北海道函館市は、寒冷地にありながらも天候・自然環境に恵まれた地域です。太陽光発電や地熱発電などの再生可能エネルギーの導入や非常用電源の確保に力を入れています。北海道と連結しながら取り組みを進めています。

出典:再生可能エネルギー推進への取り組み – 函館市

図書館や消防署、小学校などの公共施設に自家消費型・余剰買取型の太陽光発電を設置して、同時に蓄電池を活用した非常用電源の確保も進めています。公共施設は緊急時には避難所として住民がスマホなどの通信機器を充電できる場所となることを目指しています。

最近では、函館駅の観光案内所や函館市新庁舎にも蓄電池を設置しています。

企業・自治体の成長と発展に欠かせないBCP対策

近年の災害の増加、激化の中で、各企業にとってBCPの策定は急を要する取り組みの1つです。その上で事業の継続に必要となる電源を自前で確保しておくことはBCPの根幹となる対策の1つであり、自家消費型太陽光発電や蓄電池の導入はその1つの解となります。

また電力コストやCO₂の削減、SDGsの取り組みにもつながり、多面的な意義を持ちます。導入コストは年々下がってきており、この機会に導入を検討されてはいかがでしょうか。

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