病院と非常電源。どんな対策があるか?

病院-自家消費 BCP
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近年、全国各地で大雨特別警報の発令や大規模地震が発生しています。実際にこれらの災害を経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。災害大国と言われる日本では、個人法人関係なく万全の対策を講じる必要があり、特に法人ではBCP対策が求められます。

病院も例外ではありません。災害時には怪我人への対応が必要となる上、人工心肺装置や人工透析治療装置などを使用した患者がいる場合、電力を断続的に供給する必要があります。この時病院の機能を停止させないために必要となるのが、非常電源です。

ここでは非常電源の概要や種類を見ていきましょう。

非常電源の設置

非常電源は消防法と建築基準法によって設置が義務付けられています。また、200床を超えるような大規模の病院においては、日本工業規格である「病院電気設備の安全基準(JIST1022:2018)」に準拠して運用されている場合が多くあります。

非常電源に関する『法律』

消防法では、特定防火対象物に該当し、延べ面積が1000m²の場合に非常電源の設置が義務付けられています。外部からの電力供給が途絶えた場合でも、防煙設備、消火栓、スプリンクラーなどの設備に電力を供給させるためのものです。

建築基準法では、排煙設備が必要(特殊建築物で延べ面積が500m²)かつ非常用エレベーターの設置が必要な場合(高さ31m以上の高層建造物)に非常電源の設置が義務付けられています。建築基準法の場合、非常用照明の設置義務があるため、これらの設備に電力を供給する必要があります。

また、これらの2つの法律に加えて、電気事業法を合わせた3つの法律によって自家用発電設備の保安点検が義務付けられています*。

*参照:きずな 15号 – 一般社団法人 九州電気管理技術者協会

非常電源に関する『規格』

病院電気設備の安全基準は、非常電源の設置に関して法的拘束力はありません。しかし、病院の電気設備は人命に関わるため、一般の電気設備よりも厳しい基準で規定されています。

非常電源について細かく定義されているので、この規格の内容に沿って非常電源について掘り下げてみましょう。

非常電源の種類

非常電源は下記の通りに区分されます。

非常電源には自家用発電設備と無停電電源装置(Uninterruptible Power Supply;UPS)が使用されます。病院内には人工心肺装置や人工呼吸器などの電源を停止できないものから照明など一時的な停電であれば問題のないものまで様々であるため、起動時間や連続稼働時間が用途によって定められています*。

*参照:JIST1022:2018 病院電気設備の安全基準 – 日本工業規格

自家用発電設備とUPS

自家用発電設備にはディーゼルや天然ガス、風力や太陽光など様々なエネルギーを利用して発電するものが存在します。今回は病院での導入例の多い、ディーゼルエンジン・ガスタービンと導入が増加傾向にある太陽光発電による自家用発電設備、また同じく注目されている蓄電池とUPSについて解説していきます。

ディーゼルエンジン型自家用発電設備

大きなトルクを持つ船舶用エンジンを用いて発電をします。

電力需要が変動しても安定的に電力を供給することができ、ブレーカーが簡単に落ちにくいという特徴を持ちます。タフな造りをしていることから、長時間の使用をが可能としています*。

*参照:発電機の仕組みと導入 発電機メーカー(ディーゼル発電機 ガス発電機)のセキュリティージャパン 国内で精密に組立ています – セキュリティージャパン株式会社

天然ガスタービン型自家用発電設備

船舶用ディーゼルエンジンをベースにした構造をしています。排出ガスは硫黄酸化物などを排出しないことから、ディーゼルエンジンよりも環境負荷の小さいとされています。現在ではLPGや自噴ガス、メタン発酵ガスなど燃料が多様化していることから、それぞれに合わせた設備への対応が図られています。ディーゼルエンジンと比較して静粛性が高く、燃料が低コストで調達できるほか低振動であることが特徴として挙げられます*。

*参照:発電機の仕組みと導入 発電機メーカー(ディーゼル発電機 ガス発電機)のセキュリティージャパン 国内で精密に組立ています – セキュリティージャパン株式会社

太陽光発電設備

燃料式の自家用発電設備のデメリットとして、燃料切れや環境への負荷が挙げられます。備蓄している燃料が尽きてしまったら、電力を供給することは不可能です。また、緊急事態であっても環境への負荷は、無いに越したことはありません。その点、太陽光発電は燃料を必要としませんし、温室効果ガスも排出しません。燃料式の自家用発電設備と比較して、長期間電力を供給することも可能です。

また、自家用発電設備には保安点検の義務があることを前述しました。2018年に発生した大阪北部を震源とする地震の際、法令点検を怠っていたため自家用発電設備が作動しないという事態が発生しました*。燃料式自家用発電設備は普段使用しないため、年に1回大規模な点検作業が必要となり、それを怠ることは法令違反であり、またいざというときに作動せず最悪の事態を招く可能性があります。

一方、太陽光発電設備は常用電源として利用することができるので、日常のメンテナンスを行っていれば、非常時でも自立運転モードに切り替われば問題なく電気が利用できます。

さらに、昼間は太陽光発電によって電力を供給することができるので、電気料金の削減が期待できます。最近は太陽光発電設備自体の価格の低下により、導入の敷居が低くなってきています。さらに、近年は電子カルテなどのICT化が進んでおり、安定した電力供給の需要も上昇傾向にあることから、太陽光発電設備が注目されています。

参照:病院の非常用電源の確保及び点検状況調査の結果 – 厚生労働省

蓄電池

近年、蓄電池は太陽光発電と共に病院への導入が注目されています。ここからは蓄電池を導入するメリットを解説していきます。

蓄電池を導入するメリットはおもに2つ挙げられます。

1つ目は太陽光発電と同時に導入することで安定した電力を供給することが可能となることです。非常時であっても、昼間に太陽光発電で発電した電力を使用し、余った電力を蓄電池に貯めることで、夜間でも電力を供給することが可能となります。

2つ目は電気料金が安い夜間の電力を貯め、昼間に利用することによって電気料金を削減することができる点です。これをピークシフトと言います。

前述のとおり、ICT化などにより電力は安定して供給する必要があります。それに伴い、消費電力は増加することが考えられます。普段の電気代を抑えるという観点から蓄電池の導入は賢明な選択と言えるでしょう。

無停電電源装置(UPS)

通常、この装置は停電や電源障害など外部からの電気の供給が途絶えたときでも、コンピュータなどに電力を断続的に供給し、安全にシャットダウンするための時間を稼いでくれる、という機能を持っています。蓄電池と似ていますが、蓄電池は直流電流を貯蔵するのに対して、UPSは特殊な器械を通して交流電流のまま貯蔵することができます。UPSがあれば、災害などによる停電時も突然電源が落ちてしまい、データが消えるという被害を回避することが可能です*。

*参照:UPSカテゴリ – UPS(無停電電源装置)ならShop APC – Shop APC by Schneider Electric

医用UPS

通常のUPSと異なり、医療現場で使用することを目的としたのもが医用UPSです。病院によっては、人工心肺装置や人工呼吸器など人命に関わる重要な装置を使用しています。停電により、これらの装置に電力が一瞬でも供給されなくなってしまった場合、患者さんは命の危険にさらされてしまいます。従って医用UPSは通常のUPSよりも、高い安全性能が求められます。

医用UPSは「UL1778」と「UL60601-1」というアメリカ保険安全試験所が認定する安全規格を取得しています。UL1778はUPS機器に関する安全規格で、UL60601-1は医療機器に関する安全規格です。後者は電気絶縁性や漏れ電流など非常に厳しい制限が設けられていることから、医用UPSはより安全な設計をされていると言えます*。

*参照:医用UPS – ニシム電子工業株式会社

まとめ

今回の記事では、病院が備えている非常電源について紹介してきました。現在、比較的大きな病院には自家用発電設備や蓄電池、医用UPSの導入が進んでいますが、病床数の少ない、無い診療所やクリニックには導入数が比較的少ないのが現状です。もし災害などにより停電が起きてしまったら、自家用発電設備を持っている大きな病院に患者さんが殺到してしまいます。医療崩壊を防ぐという視点から、病院規模の大小に関係なく、より多くの病院が自家用発電設備や蓄電池、医用UPSを保有することが望ましいといえるでしょう。

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