製造業におけるBCPの導入事例。どのような対策があるか

工場夜景 BCP
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今年は梅雨の長雨によって日本各地で甚大な被害が発生しています。自然災害が増加・激化する中、BCPの導入・推進に関するニュースが増えつつあります。先日発表された帝国データバンクの調査資料によると、BCPを「策定している」や「策定中」・「策定を検討している」とした回答が調査開始以来初めて過半数を超えており、BCPに対する意識の高まりが感じられます。

出典元:「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」 – 帝国データバンク

今回は製造業の現場で、実際に導入されているBCPについてその導入の目的や方法などを詳しくご紹介していきます。

製造業でのBCPは大手と中小ではその中身が大きく異なる

日本の製造業を取り巻く産業構造は、大手企業を中心とし、中小のサプライヤーが部品等を供給する、1つの集合体のような形で成り立っています。大手企業は一部の部品を自社で製造することはあっても、すべてを自社で生産し賄うことはできません。BCP策定においても大手企業と中小サプライヤー企業では重視する点が異なってきます。

大手企業が非常時に事業継続を図る上で、部品供給の確保は最も重要な要素のひとつです。下請け企業やサプライヤーからの部品供給をいかに確保するかについては、BCPで必ず策定する必要があります。

一方中小企業の場合は、如何にして生産活動を休止することなく事業を存続させるかといった観点でのBCP策定が中心です。

大手製造業で導入されているBCP事例

それでは、まず大手製造業で実際に策定されているBCPについて、特徴的なものをご紹介します。

調達先の分散化

国内の多くの自動車メーカーなどで実際に行われているのが、調達先の分散化です。現在の国内自動車メーカーの生産体制は、国内のサプライヤーに限らず世界中のサプライヤーからの部品提供で成り立っています。そうしたサプライヤーに何らかの災害やトラブルが発生した際に、同じ部品を他のサプライヤーからも供給できる体制を構築しています。

これまでは、その部品の製造に長けた特定のサプライヤーに一括で大量に部品を発注することで、コストを安く抑えるといった調達手法が主流でした。しかし、こうした調達方法は調達先への依存度が高くリスクマネジメントの観点からもリスクの高い手法だと考えられています。そのため、多少のコストアップをしてでも二社購買や三社購買といった調達手法をすでに取り入れている、またはその準備が進められています。

出典元:「『トヨタ自動車グループ』下請け企業調査2019」 – 帝国データバンク

上の図はトヨタ自動車のサプライヤーに関する調査結果です。トヨタ自動車の本社工場がある愛知県だけでなく、中部・東海地方を中心に広範囲に渡って多数のサプライヤーを有していることが分かります。

調達先へのBCP導入指導

同時に、自社がBCPを策定したノウハウを下請け企業にも提供し、調達先全体でのBCP対策を加速させる動きも活発になっています。

中小企業ではBCPの策定に関する知識や人的資源をもたない企業が多いため、上流企業側が積極的に支援を行うことで、サプライチェーン全体として非常時のレジリエンスを高め、調達の安定化を図る動きも存在します。

中小製造業でのBCP事例

大手企業に比べまだまだBCPといった観点に乏しい中小企業ですが、少しずつではありますが、着実にBCPに対する意識は高まりを見せています。ここでは中小企業でのBCPに対する取り組みをご紹介します。

まずは労働力の確保

中小企業にとってBCPの観点から最も重視すべき事項は「労働力の確保」です。中小企業では十分な人的リソースを持たないことが多く、ギリギリの人数で仕事を回していることも多いため、事業継続を図る上で労働力の確保は重要な課題となります。

健康管理も大切な要素

従来から冬になると毎年流行する「インフルエンザ」の集団感染に備え、ワクチン接種を社員に義務付けたり、その費用を会社が負担するといった取り組みが増えています。今年は新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大を受け、そうした感染症に対する意識が一気に高まりました。

帝国データバンクの調査でも、備えるべきリスクとして自然災害に次いで感染症が2位になっています。

会社が有事の備蓄を行う

出典元:株式会社クラウド「防災計画ByらいぷらHP」 – 株式会社クラウド

大地震や大雨の際に従業員が安心して会社にとどまることができるよう、非常用の備蓄を充実する動きも広がっています。

非常時に必要となる水や食料はもちろん、発電機や寝袋、毛布などを計画的に備蓄・更新し、非常時に従業員の安全を確保できる準備をしておくことで、生産活動の早期再開や従業員の労働環境を素早く確保することが目的です。また、有事の帰宅困難者対策といった側面もあります。

こうした中小企業向けのBCP対策支援には多くの企業が参画しており、事業内容や規模に応じた様々な提案を受けることができます

従業員の安否確認手段としてのIT活用

災害などの有事には電話が不通になることも多く、従業員の安否を確認する手段としてスマートフォンのアプリを導入する動きも広まっています。電波の状況が悪い状況でも安否情報を定期的に発信してくれる機能や、位置情報を共有できる機能を備えるなど、様々な特徴を持ったアプリが多数提供されています。

有事の指揮命令系統

大企業と違い代わりとなる人材が少ない中小企業では、有事に様々なことについて指揮や指示を行い、決断を下す人材をあらかじめ決めておくことが重要です。中小企業ではすべての意思決定権が社長に集中しているといったことも珍しくありません。しかし、有事の際に社長と連絡が取れなくなってしまうという事態も想定されます。

そのような場合を想定し、有事の際の様々な意思決定プロセスをもつ組織づくりを事前に行うこともBCPでは検討すべき重要な課題となります。

まとめ

今回は製造業におけるBCPの取り組みついてご紹介しました。しかし企業の抱える問題は企業ごとに異なり必要な対策もまた異なります。

自社の特徴や弱みをしっかりと自覚し、様々な角度からその課題の解決策を準備しておくことが重要です。100年に1度の災害が毎年のように起こる現代の日本では、非常事態がいつ迫ってくるかわかりません。

BCPの策定は大企業でも中小企業でも急務であり、策定していない企業はすぐにでも取り掛かるべきでしょう。

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