非常時対策としての蓄電池?なぜ蓄電池が注目されているか?

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非常時電源や自家発電設備との連携といった観点で、蓄電池はいま大きな注目を集めています。しかし一方で導入コストは未だ高く、導入へと踏み切りづらい状況にあります。今回、この蓄電池について解説しています。

蓄電池とは?

蓄電池とは、充電することで電気を貯め、繰り返し使うことのできる電池のことを言います。ガソリン車にも搭載され、エンジンを起動させるために使う鉛蓄電池、ハイブリッドカーのバッテリーに使われるニッケル水素電池、 携帯などの端末のバッテリーに使われるリチウムイオン電池など、蓄電池には様々な種類があります*。

*参照:蓄電池とは? – タイナビ蓄電池

蓄電池の役割とは?

蓄電池は様々な役割を持っています。ここではその役割について紹介します。

電気を貯める

蓄電池の基本的な機能は電気を貯めることです。太陽光発電などで様々な電源から作った電気を貯めることができます。太陽の出ている昼間に発電をしても、留守で使わない!という方は多いと思います。そんな時は蓄電池を活用し、昼に電気を貯め夜に使うことで電気代を抑えることができます。

ピークカット・ピークシフトに活用する

蓄電池の貯蓄機能を活用することで電力コストを下げることができます。電気料金は、電気を多く使う時間帯は高く、あまり使わない時間は安くなる傾向があります。また電気料金の中の基本料金は最も電気を消費する時間を基準に決められます。どんなに電気の使用量が少なくとも、この最大使用時が高いと基本料金は高くなってしまいます。いわゆるデマンド値と言われるもので企業にとって重要な指標の1つです。

蓄電池を活用することで、このデマンド値を下げることができます。電気代の高い時間は貯めた電気を使い、安い時間に電気を買うことで従量課金部分の電気料金だけでなく、デマンド値を下げることで基本料金も下げることができ、総合的に電気料金を下げることができます。

災害など停電時に電気を使える

蓄電池に電気を貯めておくことで、停電時など非常事態に電気を使うことができるようになります。BCP対策などで蓄電池が注目される理由の1つになります。太陽光発電と合わせることで、昼間は太陽光発電の電力の使用と貯蓄を行い、夜に蓄電池の電気を使うことで、電力会社からの給電が止まっても電気を使い続けることができます。

災害は予測の通りには起こらない

蓄電池が注目される背景には近年の自然災害の多発と激化があります。

想定外だった災害

2019年9月9日、関東地方に上陸した台風では過去最強クラスといわれるほどの台風が発生しました。近年台風による大きな被害のなかった静岡県でも、停電の発生やそれによる信号機の停止、屋根瓦が飛ぶなどの被害が各地でありました。住んでいる地域によっては長時間停電が続き、電気のない生活に苦労した方や、仕事においても業務に大きな支障が出た方もいたのではないでしょうか。

また、2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0の東日本大震災では、死者・行方不明者は2万人にのぼり、34万人以上が復興、復旧に苦しみながらの生活を余儀なくされました。一部科学者の間では地震の予兆があったとされていますが、私たち国民がそれを知ることはありませんでした。

南海トラフ地震の脅威

近い将来には、南海トラフ地震も発生するといわれています。南海トラフ地震は、静岡県から宮﨑県の一部の地域では震度7にまで及ぶと言われているほか、その周辺でも震度6弱から6強の揺れが予想されています。また、地震だけではなく、関東から九州にかけての沿岸沿いは、10 mを超える津波の発生も想定されています*。

*参照:南海トラフ地震について | 東海地震とは – 気象庁

しかし、これまでの歴史から、災害は予測よりも大きな被害をもたらしています。もし明日、南海トラフ地震のような大きな災害に襲われたら、あなたの会社はどうなるでしょうか。すぐには通常業務はできなくとも、被害を最低限に抑えられるでしょうか。または、重要なデータを失い、会社の存続が脅かされるでしょうか。

誰しも、自分の会社を災害から守りたいはずです。いつ起こるかもわからない災害に向け、最低限の電気を確保していくための対策が必要であるといえるでしょう。

災害による被害

地震などの災害が起きた場合、災害の被害としてまず挙げられるのは、停電によるライフラインの途絶です。

電気、ガス、水道などのライフラインの供給が途絶えてしまうと、市民だけでなく企業にも大きな支障が出ます。IT化が進み、業務データをパソコンやwebで管理している会社は増えています。紙での保管と比べて便利である反面、電気の供給が途絶えることでデータを失うかサーバーにアクセスできないといった自体が生じることがあります。工場などでは設備が止まり、製品を作ることできなくなったり、冷凍や冷蔵品を扱う企業では冷蔵庫や冷凍庫が起動しないことで商品を廃棄することになったりします。

東日本大震災では、停電が850万世帯、断水が230万世帯、ガス不供給が46万世帯にのぼりましたが、95%以上の世帯が復旧するまで電気が1週間、水道が3週間、ガスに至っては5週間もかかりました。

*参照:「東日本大震災水道施設被害状況調査報告書(平成23年度災害査定資料整理版)」について – 厚生労働省

災害が起きてからしばらくは頼ることのできる携帯やタブレット類も、ライフラインが途絶えてしまえば長くは持ちません。普段の業務ではもちろん、緊急事態に連絡を取り合うのに必須である携帯が使えないことは、会社にとって致命傷となるでしょう。

ライフラインを賄うには

そんなライフラインを途絶えさせない対策として、太陽光発電設備の設置があります。

太陽光発電設備を設置することで、災害が起きてライフラインの供給が止まっても、太陽の出ている間であれば電気を使うことができます。データの保存やシステムの管理など、最低限の業務や、被害を抑えるための作業を行うことができます。

太陽光発電は設置費用が高いというイメージがもたれていた時期がありますが、げんざいではその設置費用は半分以下にまで低下し、それに加えパネル価格の低下、パネル一枚当たりの発電量の増加など、コスト減と性能向上の両方が起こっています。

一方太陽光発電の弱点は、天候に左右されることにあります。雨の日には発電量が下がり、夜間は発電されません。日中、一時的に電力を賄うことはできますが、長時間電気を使い続けることや、夜間に電気を使うことができません。

その弱点を補うものとして、蓄電池が注目されています。冒頭でも述べた通り、蓄電池は昼間に太陽光発電で発電した電気を貯め、必要な時に貯めておいた電気を使う電池です。蓄電池を使えば、日中、夜間に関わらず電気を使うことができるので、いつ災害が起こっても最低限の業務を行うことができます。

蓄電池の今後

IEAによると、2017年には累計350万kWの蓄電システムが導入され、国内でも2018年度の出荷台数は7万台を超えました。2017年に約4万円/kWhかかっていた系統用電池初の初期費用も、2040年には約2万円/kWhまで下がると予想され、蓄電システムは累計約2億kW以上になるとも言われています*。

*参照:更なる再エネ拡大を実現するためのエネルギー需給革新の推進~需給一体型モデルの活用~ – 資源エネルギー庁

世界各国で再生可能エネルギーへの関心も高まっていることから、今後導入していく企業は増えることでしょう。

まとめ

災害は、見落とされて予測がされていなかったり、予想がされていても実際の被害は予想を上回るなどといった場合があります。

今回は、そんないつ起こるかわからない災害に対し、会社が業務を続けるための対策として太陽光発電を挙げました。太陽光発電は、日中や短時間であれば電気を賄うことができますが、夜間や長時間の使用にも対応するためには蓄電池の併用が必要です。

蓄電池は設置費用も低下し、世界各国でも普及が進んでいます。再生可能エネルギーへの関心も高まっている今、蓄電池の導入を検討してはいかがでしょうか。

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