中小企業庁の「BCP策定のヒント」から読み解く中小企業がBCPを策定する時のポイント

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BCPの重要性は分かっているけど、どのように策定していけば良いか分からない」

このような悩みから、BCP策定に踏み出せない経営者の方は多いと思います。そんな経営者の方にオススメなのが、中小企業庁が公表している「BCP策定のヒント」というガイドラインです。「BCP策定のヒント」では、中小企業がBCPを策定する際のプロセスや、策定する際に重視すべき事柄などがストーリー形式で分かりやすく紹介されています。

そこで今回は、「BCP策定のヒント」の中から、中小企業がBCPを策定する上で重視すべきポイントを6つご説明します*。

まずはどのような自然災害に被災しそうかを確認しよう

そもそもBCPとは、災害時の損失を最小限に抑えつつ、なるべく早く事業を復旧させることを目的に策定される計画です。そのため、まずは被災の可能性が高い自然災害を把握することが、BCPの策定には欠かせません。

自然災害を把握するに当たり、最も重要なことの1つは地理的な要因です。同じ業種でも事業所や工場の場所が異なることで被災する災害も異なります。「自社の事業所や工場等」が被災する可能性が高い災害を把握し、対策するのがBCPの策定では重要となります。

なお実際に起こり得る災害を把握するには、国や自治体が公表している「土砂災害ハザードマップ」や「地震被害想定」、「河川氾濫浸水マップ」が役立ちます。

会社にとって重要な事業とそうではない事業とを分ける

罹災した場合、すべての事業を災害前と同じように継続することは困難です。そこで、自社の根幹となる「中核事業」を見極め、中核事業に対し重点的な対策を講じる必要があります。

中核事業を把握することは、限りある経営資源を最大限事業継続のために役立てることができます。なお中核事業かどうかは、事業の収益性(売り上げや利益)や将来性、市場シェアなどの観点から判断します。

重要な事業について、どんな対策が必要?

BCPの策定にあたっては、中核事業に関して「目標復旧時間(いつまでに事業を再開できるか)」を設定することが非常に重要となります。「BCP策定のヒント」では、下記3つの観点から目標復旧時間を検討するのが良いとされています。

  • 取引先や市場はいつまで待ってくれるか
  • 市場シェアを維持できるか
  • いつまで資金繰りが持つか

また、目標復旧時間の達成を妨げる経営資源の特定も重要となります。

たとえば電気やガス、水道などのインフラは、復旧までに2週間〜1ヶ月ほどの期間を要する可能性があります。もしも、目標復旧時間よりも経営資源を確保できるまでの時間が長い場合は、あらかじめ代替できる経営資源を確保しておく必要があるでしょう。

事業の停止による資金繰り悪化や倒産を防ぐ

事業継続が困難な災害が生じた場合、収入が途絶える一方で日々の固定費や復旧のための費用がかかります。そのため、事業を復旧する前に資金が底を尽き、倒産へと到るリスクがあります。

このような事態を避けるためにも、BCPには緊急時の資金調達や資金繰りの計画も盛り込む必要があります。例えば政府系の金融機関では、緊急時に活用できる融資制度を設けています。ただし、こうした融資を利用するには、申請に手間がかかります。

あらかじめ融資制度の条件や申請方法などを知っておけば、緊急時でもスムーズに資金調達ができ、資金繰りの悪化を防ぐことが可能です。また損害保険や共済に加入するのも有効な手段であり、加入している場合は契約内容を把握しておくとよいでしょう。

取引先の希望も踏まえたBCPを策定する

取引先の考えを考慮することも、BCPを策定する上では重要なポイントです。自社だけの考えでBCPを策定すると、たとえば「1ヶ月以内に取引を再開してほしい」といった取引先の意向にそぐわなくなります。あらかじめ取引先の考えを考慮した上でBCPを策定すれば、よりお互いの希望に沿ったBCPとなり、事業の復旧・継続の可能性が高くなります。

またBCP策定にあたっては、あらかじめ取引先と緊急時の連絡手段も決めておくのがベストです。大地震などの災害が起きると、およそ1週間は通常の電話がつながりにくくなると言われています。連絡をスムーズに取れないと事業の復旧は困難を極めるため、あらかじめ緊急時でもスムーズに連絡を取れる手段を考えなくてはなりません。

緊急時の連絡手段としては、直接双方の会社を訪問したり、携帯通信会社が提供する「災害伝言掲示板」を利用する、LINEなどのインターネットでやりとりできるサービスを利用する、といったものが考えられます。どの手段を用いるかではなく、双方が災害時の連絡手段について、共通した認識を持っておくことが重要です。

BCPに向けて実施すべきことを整理し、計画的に進める

ここまでお伝えした内容は、単に決めただけでは役に立ちません。BCP策定の過程では、今後実施すべき事柄がいくつか浮き彫りとなるはずです。例えば取引先との認識のすり合わせや資金繰り計画の策定などはもちろん、災害時の被害を最小限に抑えるための工事や、重要な機械の転倒防止なども必要となるでしょう。

そうした事柄を書面等に整理し、それを計画的に実行して初めて、BCPを策定する意味があります。なお今後実施すべきことを整理する際には、中小企業庁が公開している「中小企業BCP策定運用指針」の様式が役に立ちます*。

この様式を使えば、それぞれの対策にかかる費用やその調達方法などを、一目で分かるシートにまとめることが可能です。

PDCAを回してより優れたBCPにする

普段のビジネスと同様に、BCPに関してもPDCAサイクルを適宜回すことが重要なポイントとなります。具体的には、1年おきにBCPの進捗状況や改善状況を見直し、実態に合わせBCPとなるよう修正を行っていきます。

日々の事業活動が忙しく、BCPの事前対策が進んでいないケースは多々あります。進んでいない状況を放置しないためにも、1年おきに事前対策の進捗状況を確認し、進んでいなければ重点的に取り組むことが重要です。

また1年前と比べて、中核事業や目標復旧時間が変わっている可能性も十分に考えられるでしょう。こうした項目が変わっている場合、昨年に策定したBCPはあまり効果的でなくなっています。そのため、変更があった場合にはその都度改善を施すことが重要です。

一度作成して終わりではなく、毎年PDCAを回し、より良いBCPを策定するように注力しましょう。

まとめ

一見するとBCPの策定は、複雑で面倒なものに思えるかもしれません。しかし、「BCP策定のヒント」を読み解けば、BCPを策定する上で重要なポイントを簡単に理解し、BCPの策定につなげることができます。

今後BCPを策定予定の中小企業経営者の方は、ぜひ今回お伝えしたBCPのポイントを踏まえた上で、実際にBCPの策定に挑戦してみて下さい。

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